バンクシーには「仮面」が必要、 私たちには「ログアウト」が必要 —— 自分の心を守る、つながらない権利

ストリートアーティスト バンクシーの本名が明らかになったというニュースは、世界中に衝撃を与えました。彼が長年匿名を貫いてきたのは、単なるブランディングではなく、表現の自由や創造性を広げるための自分を守る権利だったのではないでしょうか。

現代のビジネスシーンに目を向けると、私たちはバンクシーとは真逆の状況に置かれています。SNS、チャットツールによる24時間の連絡、位置情報やオンラインステータスの可視化など、情報通信技術によって常時アクセス可能であり、仕事とプライベートの境界線が昔よりも曖昧になりやすい時代です。


つながらない権利はメンタルヘルスの防波堤

「繋がらない権利(Right to disconnect)」とは、勤務時間外に仕事上のメールや電話を拒否する権利のことです。令和5年労働時間制度等に関するアンケート調査によると、時間外の業務連絡に出社や通信機器を利用して対応はしたが「できれば対応したくないが、やむを得ない」と回答した人の割合は50%以上、「対応したくない」との回答が20%前後との結果でした。つまり、時間外の業務連絡に苦痛を感じている人が大半との結果でした。
すでにフランス、スペイン、イタリアでは法制化されているものの、現在の日本では繋がらない権利についての明確な法律はありません。厚生労働省のテレワークガイドラインでは「休憩時間や所定労働時間外、休日にメールを送付することや電話をかけることは控えることが望ましい」と明記されており、一部の企業では勤務時間外の連絡を原則禁止する社内規定を定めるなど企業の自主規制に委ねられています。2025年の労働政策審議会では繋がらない権利が議題にあがり今後のガイドライン策定が示唆されていましたので、今後は繋がらない権利が社会の潮流となるでしょう。

なぜ繋がらないことが重要なのか?

産業医の立場から見ると、オフ時間はメンタルヘルスにプラスになります。

自律神経のバランスが整う: 常に通知を気にしていると交感神経がたかぶった戦闘状態といえ、睡眠障害や胃腸の不調を招きます。
心理的安全性の確保: 休日は何をしても自由だという保障があると、仕事への集中力と創造性が高まります。
バーンアウト(燃え尽き)の防止: 仕事と私生活の境界が曖昧になると、気が休まる暇がなく、知らぬ間にエネルギーを使い果たしてしまいます。



今日からできるアクション

  1. 通知を減らす: まずは「見えてしまうと気にかかる」という脳の仕組みを物理的に防ぎます。スマホのおやすみモード、集中モードを活用し、Slack、Teams、LINEなどの仕事用アプリと連動させましょう。退社後など特定の時間帯は通知表示されないように設定します。
  2. 反応しない勇気: 優先順位をつけないと仕事に終わりはありません。緊急性の低い連絡には、翌営業日に返信することを自分のルールにします。メールの予約送信機能を活用し、深夜や休日に思いついた仕事の連絡を、あえてその場で送らず、翌営業日の始業時間に予約送信します。これにより、相手に休日に連絡しても良いという誤解を与えず、連鎖的な反応を防げます。
  3. 社内教育やルールの見直し: つながらない権利を知ることで社内風土を見直しましょう。同調圧力を防ぐために、緊急対応の基準を明確にしつながらない時間を社内ルールとして設定してみてはいかがでしょう。


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参考文献
・Reuters (2026.3.16):「謎の芸術家バンクシーは英ブリストル出身の男性〜」
・厚生労働省 : 「労働時間法制の具体的課題について」「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び管理のためのガイドライン(テレワークガイドライン)」
Sonnentag, S. (2007): "Psychological detachment from work during off-job time"(仕事からの心理的切り離しに関する研究)

※本記事の画像はAIで作成しています