【2026年3月】麻しん流行中。産業医が解説する職場で慌てないための対策

2026年3月現在、日本国内で麻しん(はしか)の感染報告が相次いでいます。はしかは子供の病気というイメージがありますが、大人が感染すると重症化しやすく、職場内での集団感染リスクも非常に高い感染症です。今回は、麻しんの特徴と企業が取るべき対策について解説します。
1. 2026年3月時点での麻しん(はしか)の現状
- 感染者数の推移:国立感染症研究所や地方自治体の報告によると、2026年に入り麻しんの感染者数は過去数年を大きく上回るペースで推移しています。2025年は通年で265例であったのに対し、2026年は3月1週目の時点で国内での累積報告数はすでに100例を超えています
- 地域別の動向:特に東京都、愛知県、神奈川県、大阪府など大都市圏のみならず、全国で報告が相次いでいます。
- 年齢層の特徴:感染者の多くは20~40代。その理由は、一つ目は社会的活動性が高いために移動や接触の機会が多いと考えられるためです。二つ目は麻しんワクチンの定期接種回数が少ないためと考えられます。日本の麻しんワクチンの定期接種回数は世代によって異なっており、1990年から定期接種2回となっていますが、1972年〜1990年生まれは麻しんの定期接種が原則1回が標準であり、時間経過とともに効果が弱まっているリスクがあるためです。補足すると、1972年以前は麻しんワクチン接種は定期接種でなかったため、自然感染で免疫がある人も多いですが注意しましょう。また、麻しんワクチンを2回打っている20代でも感染者が多いため、ワクチン接種の有無に関わらず注意が必要です。
2. 麻しん(はしか)とは:感染力が強いといわれるゆえん
- 麻しんウイルスを病原体とする感染症です。感染後は10~12日の潜伏期間ののち、発熱・咳・鼻水など風邪と同様の症状や結膜充血で発症します。この時期をカタル期と呼び、非常に感染力が強い期間です。その後は発熱や発疹、麻しん患者特有の症状であるコプリック斑(頬の内側の粘膜に出現する白い斑点)がみられます。発疹は4~5日続いたのち徐々に退色して色素沈着後に消失し、合併症がなければ発症後10日前後で回復します。麻しんの合併症として肺炎や脳炎にも注意が必要です。
- 麻しんウイルスは非常に感染力が強く、空気感染、飛沫感染、接触感染のいずれの経路でも広がります。感染経路が多岐にわたるため予防対策が非常に難しく、感染が広がりやすくなります。
- 1人の感染者からその免疫を持たない人何人に感染するかを示す指標(Anderson&May,1991)によると、季節性インフルエンザ1∼1.5に対し、麻しんは12∼18と極めて高い値です。日本では麻しんワクチンを受けている人がいるので、ここまで高い数値ではないと考えられますが、麻しんの感染力が強いことを示しています。
2. 職場における感染拡大のリスク
- 空気感染するため、手指消毒、マスク、パーテーション等では防げません。
- 発症前の「カタル期(咳や鼻水など風邪のような症状が出る時期)」が最も感染力が強いため、気づかぬうちに職場で感染広めている可能性があります
- 特別な治療法がないため、対症療法が中心となります。感染しても症状がでない不顕性感染はほぼありません。また、麻しんに対する免疫を持っていない人が感染者に接触すると高確率で発症します。そのため療養と感染を広げないために休業が必要になります。
3. 企業・従業員が取り組むべき対応
職場での予防対策
- 空気感染対策に職場での換気回数を増やしましょう
- 特に医療、福祉、教育、海外出張の多い職場では、予防接種記録を平時から把握しておきましょう
- 有効な予防法はワクチン接種です。特に海外出張に従事する社員への抗体検査・ワクチン接種費用の補助の検討が有用でしょう
麻しんワクチン接種歴の確認
従業員は、母子手帳を確認し、麻しんワクチンの2回接種歴があるか確認してください。記録がないまたは不明な場合は、免疫があるかを調べる抗体検査を受け、ワクチン接種することが推奨されます。自治体によっては、麻しんの抗体検査やワクチンに補助金が出ることがあるため、お住まいの地域のホームページを確認しましょう。麻しんワクチンを接種する場合、妊娠の可能性がある女性は接種後2か月間は妊娠を避けましょう。先天性風疹症候群を予防するためです。
疑わしい症状が出た、麻しんと診断されたときの対応
- 従業員は、発熱・鼻汁・結膜充血・皮疹などの症状がある場合、会社に報告し出社は避けましょう
- 会社では、麻しんを発症した従業員には、解熱後3日を経過するまでの出勤停止の指示を出し、復職時は医師による「感染のおそれがない旨の診断書」を提出してもらいましょう。
- 麻しん感染が発覚したら、①職場でのクラスター(集団感染)を防ぐために、迅速に接触者調査をしましょう。接触者とは、感染可能期間(麻しん発症1日前より解熱後3日間まで)に患者と直接接触した人、飛沫感染可能な範囲で(患者から2m以内で)で会話等をした人、同じフロアや会議など密閉された空間を共有した人を指します。最後に感染者と接触した日から21日間は健康観察期間とします。毎朝体温を測り、発熱や咳などの症状が出た場合は、即座に出勤停止とし、医療機関へ電話相談するよう指示しましょう。②免疫がない方、ワクチン1回接種の方は、緊急ワクチン接種(接触後72時間以内)やγグロブリン接種製剤の投与(接触後4日以上6日以内)で発症予防や重症化を防げる可能性があると、ガイドラインで示されています。しかし、判断は各々の状態によるためまずは主治医や医療機関に相談する、といったほうが現実的かもしれません。③公共交通機関の利用を避け、医療機関を受診する際には、他の患者さんに感染を広めないために必ず事前に電話で確認をしましょう。
まとめ
麻しんは5類感染症に該当し、医療機関から保健所への報告が必須です。個人の健康だけでなく、企業の事業継続計画(BCP)にも関わる重大なリスクです。風邪のようなものだろうと軽視せずに対応しましょう。

当事務所では貴社の感染症対策や就業のルールづくりでお困りの際は、お気軽にご相談ください。
出典・参考
・厚生労働省麻しん対策ガイドライン
・国立健康危機管理研究機構(JIHS)麻疹発生動向調査
・東京都感染症情報センター麻しんの流行状況(東京都2026年)
・外務省海外安全ホームページ
・学校保健安全法
※本記事の画像はAIで作成しています

